東京農工大学「プラスチック削減5Rキャンパス活動宣言」記念 高田秀重教授 インタビュー

東京農工大学「プラスチック削減5Rキャンパス活動宣言」記念 高田秀重教授 インタビュー

東京農工大学
「プラスチック削減5Rキャンパス活動宣言」記念
高田秀重教授 インタビュー

令和元年8月9日に、東京農工大学はプラスチック削減のための宣言を行いました。今回はその記者会見にうかがい、終了後にマイクロプラスチック研究の第一人者である高田秀重教授に特別にお話をお聞きすることができました。

(聞き手:笹森府中オフィス長、武井ESG推進室 室長代理)

東京農工大学「プラスチック削減5Rキャンパス活動宣言」記念 高田秀重教授
高田 秀重 教授 プロフィール

東京農工大学農学研究院物質循環環境科学部門教授。

1984年東京都立大学理化学研究科化学専攻修士課程修了。

2007年より現職。環境ホルモンやマイクロプラスチック関連の著書・論文多数。

日本水環境学会学術賞など、多数受賞。

マイクロプラスチック研究の第一人者として著名。

ペットボトル削減のためには給水器の普及が不可欠

本日はよろしくお願いいたします。いつも色々なメディアで、先生のインタビューなどを拝見しています。ですから、本日お会いできて大変光栄に思います。

高田 秀重 教授

ありがとうございます(笑)。

弊社は非上場なのですが、ESG推進室という部署があります。ESGの部署というと上場企業が金融市場での価値向上を意識して設置することも多いのですが、弊社は会社のミッションとして環境に取り組むという意思を明確に表明するために設置しました。

具体的には、プラスチックごみ、その中でも特にペットボトルごみを削減していこうという取り組みです。海外では実際に、パリ市などが主導して給水スポットを設置していて、ペットボトルごみ削減の効果が出ています。

高田 秀重 教授

日本も武蔵野市が、市を挙げてマイボトルキャンペーンを行っていますよね。給水スポットが何箇所かあるというマップも作ったりされています。そういった取組みは良いですよね。

弊社はさいたま市に本社があるのですが、さいたま市と協定を結んで、まさに給水スタンド(給水スポット)を拡げていこうという取組みを行っています。

高田 秀重 教授

なるほど。確かに先日さいたま市で学会があったときは、マイボトル用の給水器があって良かったですね。

先日、先生が出演されていたテレビ番組を拝見しました。そこで「レジ袋だけではなく、ペットボトルを削減しないとだめなんだ」とおっしゃっていて、弊社内でもみんなで「そうなんだよね」と話題になりました。

高田 秀重 教授

そうなんです。本当に給水器を普及させる必要があると考えています。研究活動の中で野外での調査も多いのですが、朝に家で水筒に水を入れて持っていっても、昼にはもう無くなってしまいます。ですから、昼食はファミリーレストランに入ってドリンクバー付きで注文をして、そこで水筒に水を入れて持ち帰るということをしています。

多くの公共的な場所に給水器を設置しないとだめだと思います。この給水器は水道直結式ですよね。それが非常にいいなと思います。水という重量物を他国や遠隔地から運んできてそれを売るというのは、水道水の性質が良い日本においてはナンセンスなことだと思います。水道直結型で、このような給水器が出るというのは非常に大事だなと思います。

ありがとうございます。このような給水器が大学に導入されるということは、すごく大きいことですよね。

高田 秀重 教授

大きいと思います。プラスチックのごみを減らすという観点だけではなく、大学でこれから持続可能社会について勉強する若い人たちが、水をボトルに詰めて遠隔地から運ぶ事、環境的にどうなんだろうかという事を考える大きなきっかけになると思います。

使い捨てから水筒を持ち歩く文化への転換

そうですね、水資源やCO2の発生という面でも。先程の記者会見で、実習の際に学生さんが皆さんマイボトルを持って来られたとおっしゃっていました。60名とはすごい人数ですが、若い方のほうが順応性が高いような気がします。

高田 秀重 教授

だいたい、小・中・高校までは野外授業があると必ず水筒を持参していたのが、大学生になるとそれが変わってしまう。自由にできるお金もできて変わってしまうという部分もあるので、やっぱり大学初年次でのリデユースの教育というのは大事だといます。これまでせっかく高校までやってきた事が続くようにという。

そうですね。先程もおっしゃっていましたけど、大学外でも、わざわざファミレスに入らなくても色々なところに給水器があればいいですよね。そういった働きかけを弊社も行っています

高田 秀重 教授

コンビニで有料でも、50円程度でもいいので、マイボトルに詰められるといいなとは思います。いまスターバックスが、マイボトルを持って行くとコーヒーが20円引きになります。それと同じように、コーヒーは飲まないけど水だけ買いたいとか、そういう形でもいいのかもしれません。色々なところに有料でいいので、給水器が置かれるといいなと思いますね。

「リサイクル神話」が日本では浸透している

以前、先生も何かのインタビューでおっしゃっていたのですが、「ペットボトルはリサイクルされているからいいんじゃない」というリサイクル神話。このように思っている方がとても多いのが現状ですね。

高田 秀重 教授

プラスチック削減を進める行政機関の方でも、リサイクルやデポジット制などのリサイクルを促進する仕組み作りが大事だという「リサイクル神話」を信奉されている方が多いと思います。

そもそもリサイクルできないから、汚れたプラごみを東南アジアに輸出していた訳ですよね。それはリサイクルも難しいし、ましてエネルギーもかかるという事の裏返しなので。やっぱりリサイクルよりもまずは削減ですよね、ペットボトルに関しては。

私どももペットボトルを減らしていきたいと考えています。先生は調査や研究という面でマイクロプラスチック問題にアプローチされていらっしゃいますが、このような現状を知ってもらうために、私どものような民間企業が、どのように情報発信をしていくかがとても難しいなと感じています。

高田 秀重 教授

こないだからCMやっていらっしゃいましたよね?さかなクンの。あれはかなり大きいですよね。

ありがとうございます。

高田 秀重 教授

CMではあるのでしょうが、CM以上の効果があると思います。このような海の問題を考えてもらう。よくあるのは、海の生物が出てきて「リサイクルしましょう」みたいな話で終わってしまう。あのCMはペットボトルの代わりとして給水器が出てくるので、すごく斬新だと思いました。

ありがとうございます。レジ袋、ストローだけではなく、ペットボトルも削減しなくてはいけないという点で、給水器の普及と、ひとりひとりがマイボトルを持つ文化を推進していこうと思います。

プラスチックは有害物質を含んでいる

高田 秀重 教授

ひとつ付け加えると、せっかく給水器から水が出てきても、このマイボトルの一部にもプラスチックが使われていますし、リユースのプラスチック容器を使われている方がいるので、その点が私としてはどうなのかな、と思います。

それらもいずれはだんだん劣化してきてマイクロプラスチックになりますから。劣化しないようにするにはたくさん添加剤を入れる必要があります。たくさん添加剤を入れれば、それが溶け出してくる恐れがあるということで、結局はプラスチックに頼っていてはだめなんですよね。

プラスチックに含まれている添加剤が有害で、蓄積されるという事は、今日はじめて、お話を伺って知りました。例えば海の中のPCBと結び付きやすくて、それが人間の体内に入ってくる恐れがある、というのはなんとなく分かっていたのですが、ということは海の中にいかずとも、陸で細かくなっていたものでも有害物質が溶け出す恐れがあるという事なのでしょうか。

高田 秀重 教授

もともと添加剤はプラスチック製品には入っている物です。ただし、製品の状態であればそんなには溶け出してきません。試験を行って溶出してこなければ問題なしという事で、今まで使われています。製品だったものが風雨や水流、紫外線などにさらされると細かくなる。細かくなると水や空気に接する面積が大きくなるので、溶け出しやすくなります。それが生物の体内で溶け出して取り込まれるということです。

そこも一般の方たちはなかなか知らない部分ですよね。プラスチック削減というと「ごみ問題」捉える方が多いと思います。

高田 秀重 教授

そうですね、ごみ問題じゃなくて、本当は皆さんの健康問題なんです。しかし健康問題というと「すぐ死んでしまうのか」とか、そういう事ではないんですよ。もっと長期的な、慢性的な疾患を残すものなんです。

例えば、僕ら人間で言えば中性脂肪が多くなる、それですぐ死んでしまうという訳ではないけど、場合によっては高血圧を併発すれば血管が破裂するなども起こりやすくなります。

それと同じで、短期的に死亡に関与したり、すぐに身体のどこかが損傷する、ということではありませんが、非常に長期的に、慢性的に我々の健康レベルを下げることになっていきます。その原因がプラスチックの問題だと結び付けて考えるのは、皆さんなかなか難しいのですが。

そのあたりも私たちでも情報発信をしていきたいなと思っています。あと、水道水についてお聞きしたいのですが、日本の水道水にマイクロプラスチックが含まれているかという調査はまだされてないですね。

高田 秀重 教授

まだやってないですね。何十リットル・何百リットル単位でろ過しないと無理かもしれません。技術をお持ちの先生方は既に始めているかもしれないですね。大気中にはマイクロプラスチックが浮遊しているので、現状では、大気から混入したものと水そのものにあるのかを区別するのが難しい面がありますね。

そういった物で得られた情報、調査結果みたいのを一般の私たちが知る事ができるのはまだまだ先になるのでしょうか。

高田 秀重 教授

結果が出れば報告されると思います。

本日はお忙しい中ありがとうございました。

高田 秀重 教授

こちらこそありがとうございます。

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