長野県諏訪市 市長 金子ゆかり様インタビュー
小さな一歩・・・「だから、やらない」のと「それでも、やる」の大きな違い
高原湖畔都市として豊かな観光資源を持つ諏訪市で環境問題への取り組みを拡大する意義ややりがいをお聞かせ下さい。
諏訪市は、標高759mという高地にある諏訪湖の畔に、医療・教育・金融機関・住宅・商業地等の都市機能を有する日本国内でも珍しい都市です。
諏訪湖には31の川が流れ込み、ここから天竜川という1つの川が海へ向かって流れていきます。いわば中継地点となっていますので、かつては上流から流れてきたごみや汚水が諏訪湖に滞留し、汚れた湖であった時代もありました。
長野県は海のない県ですが、この湖の水は太平洋へ流れていきます。
諏訪湖ではプラスチック製品として存在していたものが、海へ流れ着く頃にはマイクロプラスチックとなり、海洋汚染や生態系を脅かす原因となっている事実を、私は重く受け止め、「日本の屋根からごみを出さない」をコンセプトに、ごみの減量や諏訪市の美化に取り組んで参りました。
私が就任するずっと前から、諏訪市内では一斉清掃という取組を、春と秋の年2回実施しており、諏訪湖畔では、2022年には団体と諏訪湖周自治体が連携し、約3,000人が参加し大規模な清掃活動が行われました。市長として「諏訪市の市民は、自然環境を守る方たちである」と自信をもってご紹介できることは大変うれしいことです。
また、最近では市外からもこうした活動にご参加くださる方がいらっしゃいます。諏訪市は、その自然の美しさから映画のロケ地となることも多いのですが撮影関係者の方が清掃活動をして下さったり、スポーツに訪れる方が諏訪市の美化に取り組んで下さったりしています。
2022年には第1回目のスワコエイトピークストライアスロン大会が開催されました。美しい諏訪湖と八ヶ岳の自然の素晴らしさを次世代へ受け継ぐべく、長野県による 「諏訪湖創生ビジョン」と連携し、諏訪湖を「人と生き物が共存し、 誰もが訪れたくなる」美しい湖へと変身させる試みを広く発信するという大会理念を掲げ、2024年に予定している第2回大会に向けて、スポーツ分野でも地域の環境に対する関心が高くなっています。
金子市長は諏訪青年会議所(JC)の理事に就任された際、「まちづくり委員会委員長」になられた際に、「ぼくらまちの環境探偵団」のイベントでゴミ問題を考える「ゴミ柱」を提案されたとお聞きしました。
諏訪大社の御柱祭では、大きなモミの木の柱をお宮に建てます。地域に根付く御柱祭をモデルに、環境への意識啓発のために柱をくりぬきごみを拾っては入れ「ゴミ柱」を曳き歩くというイベントを考案しました。
「ゴミ柱」の他にも諏訪市に縁のあったさだまさしさんの「関白宣言」の替え歌でごみの捨て方をお伝えする試みなどもやりました。25年前の当時から、JCの若者たちはごみ問題に対する意識を持っていました。
2022(令和4)年度から2031(令和13)年度までの10年間を計画期間とする「第三次諏訪市環境基本計画」では、脱炭素社会の実現や、ごみを減らし資源循環型の社会への転換、環境について学ぶことでより良い諏訪市の環境づくりに取り組むといった5つの基本目標が策定されています。
企業では「ごみは資源である」との意識が浸透し、かなり削減されてきています。一方、家庭部門では意識の転換はなかなか進みづらい現状があります。
かねてより私は家電製品等を廃棄する際の費用のデポジット制度を提案して参りました。デポジット制度では、モノを購入する際にデポジットとして費用を多めに支払い、ごみとして廃棄する際にはその費用が手元に戻ってくるため、一般の方が自然に適切な廃棄方法でごみを処理することが可能になります。行政として制度を設計する際に、行動を変える仕組みが重要だと考えています。
2022年に諏訪市は「ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました。
諏訪市は、2050年までに諏訪市における温室効果ガス排出量実質ゼロを目指し、市民、事業者、市(行政)が一丸となって脱炭素社会の実現に向けた取組を推進する決意を示すため、2022年3月26日に諏訪市文化センターにおいて、「諏訪市ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました。
その際に、企業の代表者、市民、団体、学生など、実に多様な方たちと手を結び、「ゼロカーボンシティ」への取組は全ての人が参画できるということを強く訴え、「共同宣言」という形にしたのです。
こうした活動は「自分事」にするのが大切だと考えています。
諏訪市においても、環境政策に携わる環境課が2023年度から「ゼロカーボンシティ推進室」を兼務することとなりました。
環境に対する取組は効果がすぐには顕在化せず、時間もかかることが多いです。
ただ、その小さな一歩について「だから、やらない」のと「それでも、やる」ということの間には大きな違いがあると考えています。
2022年9月30日(金)に諏訪市とウォータースタンド株式会社は長野県で初めて「プラスチックごみ削減と脱炭素社会実現に係る連携協定」を締結しました。
私自身も市長室にマイボトルを置いて利用しています。荷物が重くならないよう、持ち歩く際はリユース可能な軽いプラスチック製のマイボトルを持つなど工夫しています。
「マイボトルは重いから持ち歩かない」とか「給水する場所がないからマイボトルを持たない」といった「やらない理由」も、参考意見として大きな意味があると考えています。行政にはこれらの意見が多く集まってきますので、これらのご意見は次なる事業のヒントとしていきたいと考えています。
八ヶ岳中信高原国定公園内の霧ヶ峰自然保護センターにも「給水スポット」を設置しています。こうした場所に来られる方達は、自然を愛し、自然環境を保全するために元々マイボトルをお持ちの方が多かったので「給水スポット」から給水できるようになり、非常に喜んで頂けていると思います。
また、市庁舎1階では、設置された「給水スポット」に市民の方が関心を持って近づく様子を見かけることがあります。以前は何気なくPETボトル飲料を購入し、「飲み終わったPETボトルがどうなっていくのか」が「意識の外」にあったところが、市の「マイボトルへの給水」の呼びかけで「意識」に上るようになったことは大きな変化だと思います。
マイボトルに給水するという行為自体は「バタフライエフェクト※」と呼ぶべき小さなものであるかも知れません。しかし、マイボトルへの給水を通じて市の取り組みをご理解頂き、実際に行動が変わることで少しずつ、大きなムーブメントにしなければと考えています。
2023年からは更に多くの場所での給水が可能となりました。ぜひ、市民の方だけでなく諏訪市を訪れる方にもマイボトルで「給水スポット」から給水頂きたいですね。
※バタフライ・エフェクト(butterfly effect, バタフライ効果):ほんの些細な事がさまざまな要因を引き起こした後、非常に大きな事象の引き金に繋がることがあるという考え方。
金子市長のマニフェストや施政方針を拝見すると、環境を保全しながら、同時により暮らしやすいまちづくりをされていくという熱い思いを感じます。
若年層やこれから諏訪市に来られる未来の世代のために、進めていかれたいことや計画があればお聞かせ下さい。そのために私たちの世代がすべきことについてもお考えをお聞かせ下さい。
若い方と話をすると「日本の屋根からごみを出さない」というコンセプトに共感して下さる方が多いと感じます。また、「何度もリユースして使う」ことを「もう一度モノの価値を見出す」こととして共感して下さるセンスや哲学を持っておられます。未来の世代に対して、「磨けば輝く 透明度日本一」の諏訪市を遺していくことは私たちの世代の責任であると感じています。
この「透明度日本一」には様々な思いを込めています。
諏訪湖の美しさや清浄な空気だけでなく、心の壁を取り払い、社会に向けて開かれた状態や将来への見通しを含めて「透明度日本一」を目指す。この言葉に込めたのは希望です。
諏訪市、そして諏訪地域の資源を、未来を担う若い世代と共に磨いて輝く高原湖畔都市諏訪市を実現したいと考えています。
関連サイト
- 諏訪市ホームページ「給水スポットを設置しました」
(こちらから取組概要や給水スポット設置場所をご確認頂けます。) - 諏訪市公式YouTubeチャンネル【諏訪市ゼロカーボン】マイボトルで魅力的な高原湖畔都市
ウォータースタンドについて
浄水型ウォーターサーバー ウォータースタンドは、いつでも安全安心な飲料水が使える利便性の高さと、運搬や使い捨て容器を必要としないエコな給水システムが支持され、子育て世帯を中心とした個人宅や、SDGs達成に取り組む法人、大学などに支持されています。
2021年7月には、「ウォータースタンド ガーディアン」は、赤ちゃんのミルク作りがラクにできること、それによりパパ・ママの心に余裕が生まれ、子育てを楽しむことに貢献できる製品であることが評価され「2021年度日本子育て支援大賞」を受賞しました。
未来の世代に向けたウォータースタンドの
取り組み
ウォータースタンドは、2020年2月にミッションとビジョンを新たに策定しました。当社は、暮らしに寄り添う製品の開発・提供と環境負荷軽減に貢献する事業経営を通じ、未来をつくる次世代育成に積極的に取り組んでいます。
ウォータースタンドのミッションとビジョン
ウォータースタンドは 未来の世代のために
より良い地球環境を引き継ぎます。
わたしたちは、2030年までに 日本の使い捨てプラスチックボトルを 30億本減らします。
ウォータースタンドは
マイボトルを携帯する新しい文化を創り
気候変動とプラスチックによる
環境問題に取り組みます。
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